2000年以上前にフィンランドで生まれ、今では遠く離れた極東の島国・日本でも多くの人から愛されているサウナ。
日本においては神道の禊や仏教の禅修行など、湯に浸かることは古くから心身を清める習慣として人々の生活に深く結びついてきました。
サムライたちが守り伝えてきた沐浴と、白夜の夏と厳しい冬の風土を背景に生まれたサウナ文化。
二つの異なる文化が重なり合うことで、北欧の地で生まれた文化であるサウナが、日本で独自の進化を遂げています。
今回は禅の心を感じる和のサウナ、熊本にある松井別館「湯屋 水禅」について紹介したいと思います。
“個”の極地「プライベートサウナ」
今回紹介する湯屋 水禅には「大湯(おおゆ)」と呼ばれる大浴場と、「浴司(よくす)」と呼ばれるプライベートサウナの2種類があります。
今回は「浴司」を予約し、他にお客さんのいない自分だけの“個”の空間を楽しむことにしました。
和のテイスト満載のサウナ室
引き戸になっているサウナ室の扉はさながら茶室の躙口のようで、いきなり和の先制パンチをくらった気分。
引き戸を開けるとそこにはこれでもかと和のテイストを散りばめたサウナ室が広がっていたのです。
サウナ室の床は畳、打ち水でもしようかといった桶と柄杓のセルフロウリュウセット、サウナストーンは熊本が火の国と呼ばれる所以である阿蘇山の玄武岩。
禅だとか武士道だとかよくわからないし、なんならベッドで寝て休みの日にはフレンチトーストなんて食べちゃおうかなと思っている現代の日本人である筆者ですが、やはり日本の伝統を感じるような和の雰囲気を目の当たりにすると遺伝子レベルで心が安らぐのを感じました。
オリジナルフレグランスで楽しむセルフロウリュウ
サウナ室の温度はだいたい85℃から95℃の間くらい。
さっそくセルフロウリュウをやってみましょう。
セルフロウリュウ用に用意された桶の中には「湯屋 水禅」でしか楽しめないオリジナルフレグランス「水禅」が入っており、熱せられた玄武岩のサウナストーンにかけるとジュウという音とともに緑茶の優しい香りがサウナ室を包みます。
茶室のような造りでありながら日常生活ではありえない高温空間という、日本人なら誰もが感じるであろう奇妙さを味わいつつ、サウナ室に充満する水禅の香りと水蒸気によって高まる体感温度が穏やかな高揚感を与えてくれる、そんなひとときでした。
檜香る水風呂
浴室内にはふたつの檜風呂が並んでおり、片方がお湯、もう一方が水風呂です。
サウナ室を出たらまず狐桶という珍しい形の桶で汗を流し、水風呂へと向かいます。
水風呂の温度はサウナーからしたら少しぬるめの20℃前後。
「20℃では物足りない!俺たちはもっと冷たい水風呂がいいんだ!」というサウナーの声が耳をつんざいていますが、安心してください。
側には製氷機が用意されており、水風呂に氷を投入することで自分好みの温度の水風呂を作ることができます。
肌触りの柔らかい水質が自慢の水風呂。深さが自慢の立って入れる水風呂。混雑時にも安心の広さが自慢の水風呂。
サウナ施設の数だけ様々な特色の水風呂がありますが、檜の香りを楽しみながら熱った身体を冷ますことができるのは、旅館の中にあるサウナ施設ならではの体験だなと改めて感じました。
畳でととのう休憩スペース
身体の水気をしっかりと拭き取ったら畳の敷いてある休憩スペースへと向かいます。
畳に寝そべり、ただぼんやりと天井を眺めるだけの時間は心地よさの中にどこかノスタルジーに浸ってしまうような不思議な感覚を覚えます。
程よい温度設定の空調と流れるクラシック音楽。
そんなに上品な家庭に育ったわけではありませんが、背中に感じるイ草の感触が小学生の頃に祖母の家で過ごした夏休みを思い出させてくれるようで、もう戻れない日々に少しだけ寂しさを感じる自分に気づきました。
休憩スペースにはバルミューダのスピーカーが置いてあり、自分の好きな音楽を聴きながらととのうこともできます。
2セット目以降はサ道のサントラを流しながらドラマの登場人物になったような気持ちでととのうことができて最高でした。
アクセス
JA水前寺駅より徒歩12分
熊本インターより車で15分
益城熊本空港インターより車で158分
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